20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」その38

はじめに
「技」増田俊男著「資本の意志が日本を復活させる」(1999.3.31初版:徳間書店1400円+税)より
「体」ジュディス・R・ウルマン/ロバート・ウルマン共著、越宮照代訳「ホメオパシー療法」入門
(徳間書店:1999.7.31第一刷1600円+税/以下①P○○と略す)および岡崎敬得ほか著「フリーライセンスドクター」
(文芸社: 1999.10.1初版1500円+税/以下②P○○と略す)第4章より

「はじめに」

★あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
 20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」というサブタイトルでYTA細井隆好メモ「その2」を1995年3月21日に情報発信してから5年になりました(ちなみに「その1」は同年1月の新年研修会のレジメでまだ手書きでした)。「はじめ」にという時事コメントが入るようになったのは「その15」1996.10.16から、昨年は「語録」をとりあげてみました。メモのなかにはやめてしまったもの(メモ24で紹介した名古屋キャッスルのお客様評価システムやメモ16で紹介した雑誌evahの休刊など)や今では情報価値がなくなってしまったもの(メモ8で紹介した最低資本金制度は平成8年3月31日までに達成する必要がありました)もあります。 大前研一氏によれば1980年代半ば頃、価値観が多様化し、これからは少品種大量生産から多品種少量生産の時代だとさかんに言われた。ところが選択肢が増えている一方で、人は選択することが“おっくう”になり一つか二つの「売れ筋」に群がるようになって「一人勝ち」現象が起きていると指摘しています。その背景には“考えることをやめた日本人”の増大があり、みんなと同じことをしていれば安心という心理から“勝ち馬”に乗ろうとしている。自分自身に判断基準を持たず「自分以外の大衆の選択肢」
に殺到する人が圧倒的に多い。この「一人勝ち」現象は非常に危険な「刹那主義」によるものが多い。一つのターゲットにワーッと押し寄せ、次の対象が現れると今度はそちらに一斉に走り出す。その一つひとつの選択に、根拠や理由がないと分析しています(別紙トップポイント)。ビートたけしのギャグに「赤信号みんなで渡ればこわくない」というのがあります。赤信号で最初に渡る人は状況判断をきちんとして自己の責任で渡っていますが、次に渡る人は責任感が希薄になります。その次に渡る人はさらに交通法規違反の意識が薄れていきます。そのうちに状況判断もせずに渡る人が出てきて青信号の車からクラクションを鳴らされたりします。自由と責任、権利と義務、権限と責任は表裏の関係にあります。そのことを考えない(考えようとしない)、その場の状況に押し流されて生きている人が非常に多いと思います。そのツケは必ず本人に返ってきます。本人に来なければその子や孫にツケが回ります。そうならない(後悔しない)ようにするには目標や目的を明確にして考え方(選択)の筋道を自分で見つけて行くしかありません。このメモがその一助となれば幸いです。

「技」増田俊男著「資本の意志が日本を復活させる」(1999.3.31初版:徳間書店1400円+税)より

★a.経済を論じるには資本主義の本質、人間の本質を理解していなければならない。資本主義の本質は、自由奔放な限りない欲の追求である。欲には際限がない。一つ手にすれば二つ、二つ手にすれば三つ欲しくなる。できる限り自由に自分たちの欲しいものを求めあい、奪い合う。その結果として、生活水準が上がり、科学が発達し、文化が栄える。資本主義とは人間に自由に欲を追求させて、それを社会が保障する仕組みであり、欲を満たすための行動を妨げるような制約は取り除こうとする。社会主義国のような計画経済ではないから、資本主義には目標がない(欲を「自由に」追求させればよいのであって「計画」などという制約は必要ない)。

★b.「欲の追求」の理想を言えば、何もしないであっという間に巨万の富を築くことであり、資本主義では最小の労力、最短の時間で最大の利益を上げることが究極の目的になる。日本では「勤勉」が美徳とされ要領がいい、小賢しい、目から鼻に抜けるというのはあまりいいイメージではない。法に基づき知恵をしぼって払わなくていい税金を無駄に払わないよう節税ばかり考えている人はあまり尊敬されない。ところがアメリカでは「スマート」と言って尊敬される(P16-17,p152-154)。

★c.日本のような単一民族国家と違い、アメリカには何十種類もの人種が混在して住んでいる。見た目も価値観もまったく違う人たちが、それほど喧嘩もしたり問題を起こしたりせずに住んでいる。そういった人たちがともに生活をしていくためには、何かしら共通の価値観がなければならない。その共通する価値観は、また誰にでもわかりやすいものでなければならない。わかりやすいというのは、感覚的にわかるというのではなく、数字的に、あるいは紙に書いたり、絵に描いたり、言葉にしたりできるという意味でのわかりやすさである。つまり、アメリカというのは、どこの世界の人にでも、非常にわかりやすい国である(p123-124、従って税法というルールで合法と認められればそれを「ずるい」などと非難しない)。

★d.アメリカの国体を維持しているのは「アメリカ的正義」すなわち法律と裁判所である。従って都合の悪いことだから揉み消してしまおうというわけには絶対にいかない。アメリカ人は自分たちの私有財産、利益といったものを守るために自分たちで政府をつくったという歴史がある。すなわちアメリカ国民の心のよりどころとなっているのは、個人の利益の保障のための正義である。この「正義」という接着剤(共通の価値観)で異民族、異文化を一つにまとめている(p129-131)。

★e.従ってアメリカでは裁判に勝ちさえすれば、それが正義だというドライな考え方をする国である。増田氏はハワイアンの民族運動を支援して、ある事件をアメリカの裁判所に持ち込んだことがある。その事件は130年前に起こったもので、ある先住ハワイアンが所有していた600万坪の土地を、アメリカ人がでたらめな偽造契約書を作成して一方的に奪ったという事件であった。5年の歳月をかけて闘い、偽造契約書が完全な証拠物件として有利に働きハワイアンを勝利に導いた。アメリカではこうした犯罪行為に時効がない。犯罪行為を犯したアメリカ人の子孫は先住ハワイアンの子孫に土地を返還することになった。この裁判がきっかけとなって1993年11月24日、クリントン大統領はハワイに赴き、先住ハワイアンに謝罪している(船井・増田共著「日本はどこまで喰われ続けるのか」1998.6.30初版:徳間書店p198-203)。

★f.一方、ハロウィーンの日に日本人留学生の服部君が射殺された事件で容疑者は無罪となっている。というのは、アメリカ社会の基礎は私有財産にある。私有財産を他人から侵されないようにするために、法が必要であり、国家が必要だということになり、アメリカという国ができることになった。最高法規の憲法が私有財産を保障しているのだから、刑法がどうなっていようと太刀打ちできない。服部君が殺されたのは「出て行け」と言われたのに、他人の私有財産の領域に侵入して他人の私権を侵害したからである。人の命よりも私有財産の方が大事なので服部君は殺されることになってしまった(p142-145、eもfも私有財産の保障が最優先されるアメリカ的正義を象徴する話である)。

★g.アメリカ人というのは、自分だけに責任をもつ人種である。利益が出ることがわかっているのに二人でやるのはとんでもないと考える。なぜ、わざわざ自分に利益を減らして他人を儲けさせるのか、ということである。人と協力するのは、協力した方がさらに儲かる場合である。自分が儲けたいから、お互いに他人を利用しているだけで一緒に儲けようというつもりはない。口ではごもっともなことを言うが、結局大事なのは自分だけであり、信用できるのは自分だけである。儲けるのは自分だけで他人はどうでもいいと考える。個人が欲を追求し、財産を築いたり守ったりすることが国家の使命と考えているからアメリカの国家財政を黒字にしようとは思わない。政府が赤字になっても国民が裕福になっていればそれでいい。いよいよ赤字が大きくなってどうしようもなくなったら、日本のようにお金のあるところを見つけて、合法的すなわち経済的に必要な資金を取り込めばいい。それが難しければ、政治的圧力をかけてとればいい、と考える(p156-159)。

★h.また、アメリカでは、アメリカン・ドリームをデモンストレーションするヒーローなしには成り立たない。富の8割がたった3%の人々に占有され、企業のトップは一般労働者の100倍以上の5000万ドルもの給料をとり、不景気になれば5万人、10万人の首を切る社会だからである。ありえない夢に期待を結ぶ細いガラスの糸がヒーローの役目である(p140)。

★i.増田氏は、この世界を動かしている原理を「資本の意志」と呼び「資本の意志」がわかれば経済の流れが見えてくるという。資本そのものになりきって「資本の論理」の視点から世の中がどうなっていくのか予測してみる。「資本の意志」をはじめさまざまなものになりきることで、いろいろなことが見えるようになり、予測できるようになるという。例えば大蔵省の事務次官になりきって宮沢大蔵大臣、小渕総理大臣を予測し、ペルーのフジモリ大統領になりきって日本大使公邸突入およびその時期を予測している(p22-26、p72-83。増田氏のホームページ「時事直言」
http://www.luvnet.com/~ sunraworld2/)。

「体」ジュディス・R・ウルマン/ロバート・ウルマン共著、越宮照代訳「ホメオパシー療法」入門(徳間書店:1999.7.31第一刷1600円+税/以下①P○○と略す)および岡崎敬得ほか著「フリーライセンスドクター」(文芸社:1999.10.1初版1500円+税/以下②P○○と略す)第4章より

★a.ホメオパシーについてはYTAメモその18(1997.2.13)・その22(1997.8.8)でとりあげたが、いずれも波動に関連しての解説であり、断片的なものであった(それでも紹介したい治療法であった)。前書①は日本
 初のホメオパシー紹介本である。

★b.ホメオパシーはギリシア語。「Homeo」は「同じ」「Pathy」は「病気」とか「療法」という意味で「同種療法」という意味になる。病気と同種の症状を引き起こす物質をごく微量に体内に入れることによって脳にその刺激を感知させ、身体が本来持っている力を取り戻して感染と闘うことができるようになり、身体のバランスを取り戻す。一般医療薬といわれるものは抗生物質、抗炎症剤、制酸剤、抗菌、抗ヒスタミン剤などと呼ばれるもので細菌など微生物の侵入や身体にダメージを与える原因と「直接」闘う、或いは押さえ込むことによって病気を治そうとするものである。これに対してホメオパシーでは身体のコンディションが細菌の繁殖しやすい状態にあり、人間が本来持っている自己調節機能がうまく機能し ないから病気になっていると考える。従って自己調節機能が働きだす「きっかけ」を与えてやれば身体のコンディションが細菌が繁殖しにくい状態になり、病気が治っていくと考える(②p116、①p40-41、p44)。アイスバーンで車がスリップしてしまったとき、滑っている方向へハンドルを切ってタイヤを回してコントロール機能を取り戻し、徐々に減速して車を止めろ、と教わった記憶があります。ホメオパシーは滑っている方向へハンドルを切ることであり、自己調節機能は減速して車を止めることだと理解すればわかりやすいのではないでしょうか。

★c.病気になった場合、その症状の現れ方は患者一人一人で違う。ホメオパシーでは同じ病名と診断されても同じ薬が用いられるとは限らない。同じ風邪でも症状によってヨウシュトリカブト(Aconitum nappelusが使われたりゼルセミウム・クモノスバンダイソウ(Gelsemium sempervirens)が使われたりする。また、花粉症も症状によってホミカ(Nux vomica)やメキシコの植物サバディラ(Sabadilla)、玉葱(Allium cepa)が使われたりする。ホメオパシー療法士は病気の症状や悪化した環境要因などを細大もらさず問診し、患者のそのときの症状に最もあったシミリマム(最類似薬)を処方する。患者の初診に1時間から2時間、再診に30分を費やす。患者側は言い足りないよりも言いすぎるくらいの方がよい(①p48-52、p114②p123)。

★d.シミリマムは治癒過程における触媒作用のはたらきをするが、それが急性の病の場合、症状が数分から数時間で消えることがある。ただし慢性病の場合、症状は穏やかになるが完治するには時間がかかることが多い。腎臓結石や胆襄炎など通常手術が必要とされるものも症状がかなり進んでいたり、緊急の場合はともかく、早期であればホメオパシーで治療をすれば手術をしなくてもよくなることがある(①p55-56、p67)。

★e.ホメオパシーの薬は砂糖もしくは乳糖に薬をしみこませた錠剤で、口の中で溶かして服用する。液体の飲み薬、注射用の薬液、患部に塗る軟膏、チンキ、乳液などもある。薬が症状に合っていればどんな形で投与されても効果があり、内服薬を誤ってお風呂に全部入れたときにもちゃんと効いた症例がある。一般の調合薬に比べ薬は安価である。アメリカで約1ヶ月分の錠剤で5~6ドルである。費用の大半はホメオパシー療法士との面談費用で他の治療に比べ経済的である(①p120、107、207、②p125)。

★f.ホメオパシーの薬は薄めては震動させるという精製作業を何度も繰り返して作られる。薄めれば薄めるほど効き目が強くなる。1滴の薬を10滴に薄める。すると薬は10分の1になる。この過程を6回繰り返すと1,000,000分1になる。これがホメオパシーで使う一番効き目の穏やかな薬でアメリカでは6C(100分法で6回薄められたもの)からCM(10万回薄められたもの)までのものが一般的に使われる。また、ホメオパシー薬は1回ごとの薄める過程で震動させる。このことによって原料の分子がほとんどなくなってしまった状態にまで薄められた時点でも薬としての効き目を保ち続ける。これはホメオパシーの父と言われるサミュエル・ハーネマンが診療所においてある薬よりも往診に持って行った薬の効き目の方が強いことに気づいたからである(①P104-107)。

★g.ホメオパシーの薬の原料には植物から動物、鉱物など自然界にあるあらゆるものがホメオパシーの薬となりうる。その中には砒素や毒蛇ブッシュマスターの毒液なども薬として使われるが、fで述べたような精製過程でその毒性はなくなってしまう。また、副作用が起きることは極めて稀である(①P90、92、84)。

★h.ポテンシー(薄める度合い)が高いほど効き目は強いが、臓器や組織がひどく傷んでいる場合、そのままでは治療の効果が期待できないので、しばらくはポテンシーの低い薬を処方することがある(②P127)。

★i.自然界のあらゆるものがホメオパシーの薬になるということは処方されたホメオパシー薬を打ち消すものも存在することになる。これを「中和」作用と呼び、ホメオパシー薬で治療効果を上げていたのにコーヒー味の飴やクッキーを食べたために元の症状に戻ってしまった症例やリップクリームに含まれていた樟脳で再発した症例が紹介されている(P76-77、p121-124)。

★j.ホメオパシーの治療を妨げるものとしてコーヒー、電気毛布、香りのあるもの、薬物治療、予防注射、歯科治療、他のホメオパシー薬、ドラッグ、ハーブ、ビタミン剤、パーマ等が挙げられており、治療効果を妨げることがあるのでホメオパシー療法士に相談すべきである、としている(①P124-127)。


k.ただし、コーヒーもホメオパシーの材料として使われている。コフィアと呼ばれ、神経の興奮を鎮める効果がある(②p118)。

日本ホメオパシー協会 TEL.092-713-1223;ホームページhttp://www.homocopathy.gr.jp/jphma