20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」その34

はじめに
「心」思い(信念)は実現する、について
「技」山崎えり子「節約生活のススメ」(飛鳥新社:1998.10.12初版1400円+税)より

「はじめに」

★愛知県東海市が人件費削減のため選挙の投票所の事務にアルバイトの女子大生を雇ったところ、投票所の雰囲気が明るくなり、本人の選挙への関心が高まったそうです。アルバイト代は臨時職員規定の時給810-1,010円で14時間勤務。一人当たり12,560円で済みます。これまでのように市職員に依頼すると時給平均が約3倍になり、しかも時間外扱い(1.35倍)となるため一人平均45,000円もかかってしまいます。ちなみに昨年7月の参議院議員選挙では人件費が約190万円も削減できたそうです。名古屋市では投票所が365ヵ所もあって区役所の職員にも限りがあるからと町内会に頼んでアルバイトを雇っているそうですが、ほとんどの自治体は全て職員が行なっているそうです。
 アルバイト学生も、投票に来た人の入場券と残った投票用紙とで枚数に誤りがないかチェックをするなどの作業を通じて一票の重みを実感しており、先日の知事選挙で不在者投票に出かけた人もいるそうです(平成11年2月6日:中日新聞夕刊)。
 投票率の向上させるため、投票時間が延長されましたが、人件費などの選挙コストを引き上げるだけのことで根本的な解決策にはなっていません。時間延長しなくてもその人に投票する意志があれば、不在者投票という制度を利用すればいいことです。棄権はしない、投票所には出かけるという人が増えないと投票率は上がってきません。選挙に関心を持ってもらうには、アルバイトの女子大生のように選挙事務の経験をした方が効果的だと思います。私は中学生の社会勉強の一つとして選挙事務を経験させるべきだと思います。例えば参議院議員の任期は6年ですが、定員の半数は任期がずれているため3年おきに必ず選挙が行なわれます。そこで、中学1年生から3年生まで生徒全員が時間帯を区切り、交代で投票事務に携わることにすれば選挙がどのように行なわれるかを経験することができます。参議院議員選挙には比例代表もあり、さらに最高裁判事の国民審査も同時に行われます。人手もかかります。授業であれば労働ではないから時給を払う必要もありません。人海戦術でこなす開票作業も中学生全員に手伝ってもらい、それを間違いがないかだけを大人がチェックするようにすれば開票作業も早く進むはずです。翌日は休校にし、そのかわりアンケ-ト形式の宿題を出す。本人確認や投票用紙の振分作業などの経験談や、棄権する人をどう思うかといった意見を書いてもらい、翌々日に発表することにしてはどうでしょう。もっと投票率が上がると思います。

「心」思い(信念)は実現する、について

★a.日本マクドナルドの社長を務める藤田田(ふじたでん)氏はアメリカのマクドナルド社と提携してハンバ-ガ-事業に進出したときに決意をこう述べている。日本人は欧米人に比べ蛋白質のとり方が少ない。国際的な競争力をつけるには日本人の体質を変えなければいけない。日本人がハンバ-ガ-をこれから先、千年ほど食べ続けるならば、日本人も、色白の金髪人間になるはずだ。そのときこそ、日本人が世界に通用する人間になる時だ。日本人が金髪になる日まで、私は、一生懸命にハンバ-ガ-を食べさせる(同氏著「ユダヤの商法」p31-p32:KKベストセラ-ズ社1972.5.1初版)。

★b.27年も前の本であり、当時の栄養素に比重を置きすぎた考え方から日本食の方がむしろいいんだというように食事観も変わってしまったが、藤田氏のハンバ-ガ-にかける心意気だけは実現しつつある。幼児の頃からハンバ-ガ-を食べ続けた若者たちの中に金髪や茶髪にしている人をよく見かけるようになった(本人の意思で染めるということはそうなりたいという願望を持った人が増えているということである)。彼らに国際的な競争力もついてきたか、と言えば「ない」と細井は思います(藤田氏の真意は実現していません)が彼が唱えた「ハンバ-ガ-を食べ続けた人を金髪にする」ことは形を変えて実現しました。彼は日本人の体質を変えようとしましたが、それにはもっと長い年月が必要とされるでしょう。しかし、黒髪をやめて金髪に染めようと言う「意識の変化」をもたらしました(ハンバ-ガ-を食べ続けたからではないかもしれませんが、欧米人が色々な髪に染めることにこだわりがないように日本人もなってきたといえるでしょう)。

★c.アメリカン・ドリ-ムの実現を夢見る多くの人の心をとらえ、今日でも多くの人々が実践しているテクニックにアメリカ流成功哲学がある。「信念の魔術」「あなたの想いは実現する」「強く念じよ。それは必ず実現する」といった類いのタイトルのついた本やカセットが発行され、多くのセミナ-が今でも開催されている。その基になっているのはヒンドゥ-教の「ヴェ-ダ哲学」であるが、これをアメリカ人に受け入れられやすいハウ・トゥものに創作をまじえて作り直された。ゴルフやスキ-の上達法と同じレベルで「いかにして有名になるか」「いかにして億万長者になるか」が語られ、そのための具体的なテクニックが示される。

★d.例えば金持ちになりたかったら、思いきり着飾って、超一流のレストランで食事をしなさい、と説く。たとえ金がなくても、借金をしてでも、とびきり豪勢な経験を体にさせてあげる。そして「これが、私の真の姿だ」「私にはこういう生活がふさわしい」と、強く強く体に言いきかせる。すると、いつの間にか本当にそういう生活をするようになっていく、という。

★e.ヒンドゥ-教は「金持ちになりたい」とか「有名になりたい」といった世俗的な欲望は人間の苦しみを増すだけで少しも幸福をもたらさないと教えている。しかし「想念の力」には欲望であっても実現する力を持っている。極端なことをいえば、自分の成功ではなく、他人の失敗や苦痛のために「想念の力」を使ってしまうことだってある。これがいわゆる「呪い」である(天外伺朗「意識学の夜明け」p54-p56:風雲舎1997.2.10初版1700円+税)。

★f.曹洞宗を開いた道元も「何かを望むなら、その事柄を寝ても覚めても、ひたすら思いつづけよ。そうすれば、たとえよこしまな思いでもかなえられる」という意味のことをいっている。世の中で往々にして悪が栄えるのは、その悪を行う人間の欲望が-間違ったものにせよ-切実であり、熱烈であることが多いからである(塩谷信男「自在力」p52:サンマ-ク出版1998.7.30初版1600円+税)。

★g.いわゆる「成功者」と言われる人たちの中には仕事上のつき合いはしたいがプライベ-トならお断りしたい、とか、あんな身勝手な人が何であんなに(悪)運が強いんだ、とか、能力的にみて さんの方がずっと上のはずなのに何故あの人がトップなんだということがある。その人が何故成功するのか、といえば「よこしま」かもしれないが「想念の力」が他の人よりずっと強いからであると考えられる。

★h.中国の英雄豪傑がなぜ成功したのか、その秘訣は何かを研究した思想家の李宗吾は「英雄豪傑は、ただ面(つら)の皮が厚く、心が腹黒いだけである」と喝破し「厚かましくかつ腹黒く生きよ」と説く(別紙紹介記事(トップポイント1998年10月号)参照。この本は手元にあるがまだ読んでいない。拾い読みをした感じでは、紹介記事よりずっと奥の深い内容で、一読の価値は十分ある)。精神分析学者のG・フロイトは人間の意識をふつう「自分の心」だと思っている部分とふつうの状態では認知困難な部分の二重構造になっていると考えました。前者を表層意識(意識層)、後者を潜在意識(無意識層)と呼び「理性」と「知覚」は前者「本能」は後者であるとしています。正確な表現ではありませんが解剖学的に言えば脳の一番外側にある新皮質で前者をつかさどり、それより中にある古皮質などが後者をつかさどっていると考えると理解しやすいかもしれません。心理学者のユングはフロイトの考えから発展して潜在意識には個人的な潜在意識の他に他者や宇宙意識とつながる共通の潜在意識があると唱えています。「想念の力」が実現されるのはユングが唱える「他者や宇宙意識とつながる共通通の潜在意識」に働きかけるからである、というような理由づけがされているようです。

★i.想念の力を発揮させるには正しい心の使い方(正心)と腹式呼吸法(調息)がポイントとなる。前者は「かならずそうなる」「かくあるべし」と強く想念を発し、かなえたい願望が達成されたさまをイメージする(つまり「すでに達成できた」と完了形で強く想念する)。そうすると、わたしたちの内部に実現に向けてのエネルギーが蓄積され、また外へ向けて発散されて、願ったことがかなう。後者は、息を吸う→息を止める→下腹部に力を入れる→息を吐き出す→小さな呼吸を一つするという一連の動作を25回繰り返すことを基本にする。息を吸う間に「宇宙にある無限の力が丹田に収められた、全身に満ち渡った」と念ずる。次に息を満たす間にかなえたいことを願い、念ずる。つまり、呼吸に合わせて想念も吸収、集中、放射する。それによって宇宙に偏在する無限の力を体内に集中させ、放射することで心の波動をさらに強化し、願望の実現に役立てることができる。かなえたいことの代わりに「宇宙の無限の力が凝(こ)り凝(こ)って真(まこと)の大和(だいわ)のみ世(よ)が生(な)り成(な)った」と大断言を念じてもよい (塩谷:前掲書p24-25、p67、p245ーp246)。

★j.仏教やヒンドゥ教には「カルマの法則」というのがあって、自分が他人に対して行なったことが必ず自分に返ってくる、と説いている。これは「行い」だけでなく「想念」にもあてはまる。他人を害するような「想念」を抱くと、カルマの法則で自分にも害が及ぶことになる。自分の世俗的な成功を「想念の力」で実現したらどうなるか?誰かに害を与えようという想念ではない、ように見える。しかし、「試験に受かりますように」と念じることは他の誰かが試験に落ちることを意味する。だから自分のエゴの追求のために「想念の力」を使うと、どこかで必ず報いを受ける、ということになる。それではどういう使い方をしたらいいのか?オーストラリア先住民のアボリジニの想念の使い方が参考になる。彼らは砂漠を旅するのにわずかな水だけを持って出発する。彼らは毎朝お祈りをし、その日の糧をお願いする。宇宙に感謝し「それが宇宙の調和を乱さないなら、そしてすべての生き物にとっていいことなら、私たちに食料を与えてください」と祈る。すると何もない灼熱の砂漠にもかかわらずヘビとか虫とかの食料が手に入り、地下水が発見できたりする、という(天外:前掲書p47、p57-60)。

★k.では、税理士はどのように「想念の力」を使うべきか。納税通信1999.1.4号に税にたずさわるものがよって立つべき考え方が示されているように思います。税の負担に寄せる関心と同じぐらい使い方にも興味を示してほしい、そういう納税者が「どんどん増えてきた」というイメージを思い描いていきたいと思います。別紙資料「納税通信の理想とその実現運動について」をお読みいただければ幸いです。

「技」山崎えり子「節約生活のススメ」(飛鳥新社:1998.10.12初版1400円+税)より

★a.本の腰巻きに「健康」「環境」「倹約」-3つの「K」で快適に暮らす!そのうえ……35年「住宅ロ-ーン」を7年で返済!!と銘打った上記節約本が55万部も売れているという。

★b.山崎氏は、ケチと節約は違うと主張する。必要なことにも金をかけないのがケチ、知恵と工夫で金をかけないようにする(必要なら使う)のが節約であるという(1999.1.26中日新聞夕刊)。

★c.山崎氏がマンションを購入したのは1995年(p21)。まだ返済途中で、完済したわけではないが、3年間で約半分の1000万円を返済、予定通り順調に返済は進んでいる(p19、印税収入が入ればもっと早い?)。夫と2人暮らしで子供にお金がかからないとはいえ、手取り収入34万円の中から242千円の貯金・保険を実践しているという。

★d.山崎氏の節約生活は次の7つのこだわり(基本方針)に集約される(p216)。
1 「ケチ」は「倹約」にはならない
2 物をムダにする人は、お金もムダにする
3 人をあてにしていては、お金は貯まらない
4 お金を貯めたいと思うのなら、「人がこうだから」というあいまいな 考えは持たない
5 本当に欲しいものを手にすれば、欲しいものはなくなる
6 「欲しいもの」よりも、「必要なもの」を買うことの方が大切
7 究極の「収納法」は、物を持たないことである

★e.山崎氏は、いたずらに衣服を増やさない方法として「衣服ノート」を作っている(別紙資料参照)。ス-ツ、ズボン、ワンピース、スカートというように、種類、サイズ、色、購入した時期、ブランド名、そして覚えている場合は、金額を書き添える。ノートを開いて半分のぺ-ジは夫の物、もう半分に自分の物を記入する。開くだけで、今持っている洋服の枚数がわかり、その年に購入した服が確認できる。この衣服ノ-トでムダなものは買わなくなった。記入するのは、基本的に外出用や仕事用の服など、手入れの必要な(クリーニングか手洗いの)ものばかりである。年間のクリ-ニング代もわかるし、買い換えるときは手洗いのできるものを増やしたいので参考資料にもなる。最近は、手洗いのものは(手)と記入するようにしている。普段着や下着は記入しない。これらは同じ季節のものを洗い替えを含め適量枚数が決めてあり1枚だめになったら1枚買い余分に持たないようにしている(衣装持ちの友人には1枚買ったら1枚処分することをすすめた。ちなみに、友人は柄が把握できるよう服の布を3センチ角に切りとり、貼りつけた衣服ノ-トをつけている。p62-67)。

★f.食品は「安いから買う」のではなく「必要だから買う」ものだから「特売」にこだわって必要以上に買い過ぎないよう気をつけている。旬に取れたものが一番栄養価が高く、おいしい。価格も安く安定している。また、近所で畑を借りて年間に約30種類の野菜を作っており、食材代をおさえている(p91、98、71)。

★g.1週間の献立表を作り、できるだけ土・日にまとめて調理するようにしている。食材のムダが減り、光熱水費も節約できる。平日は朝食の支度といっしょに昼食の弁当を2人分作り、夕食の下準備までしてしまう。著書では1週間の炊事の段取りが具体的にわかりやすく書かれている(p71-86)。

★h.友達宅へ寿司を手土産に持っていって一緒に食べたら、家で食べるのよりはるかにおいしかった。その違いはしょうゆ。友人は天日塩の無添加しょうゆを使っていた。調味料lつで食べ物の味に違いがあることを知った山崎氏は、以後こだわりを持つようになった(別紙資料参照)。値段はスーパーの特売商品に比べ、2~10倍以上するが、年間1万円もかからない。少しで素材のおいしさを引き立たせてくれるので使用量も少ない。おいしくない料理、農薬や食品添加物を心配するよりはと割り切っている(p93-94)。

★i.山崎氏は、使用済みの割りばしを使って自分で「炭」を作っている(作り方と利用法は別紙資料参照)。割りばしでも立派に炭の効果を発揮する。木質のゴミは焼却すれば炭酸ガスを排出し、土中に埋めればメ
 タンガスを発生して地球温暖化の原因になる。炭にしてしまえば、炭素が固定されて有毒ガスの増加を防ぎ、安全で、家計にもやさしく一石三島となる(p159-161)。

★j.電力会社のパンフレットで室温は同じでも、湿度が15パーセント違うと、温度がl度違うように感じるものだと知ってからドライ(除湿)機能を活用し、エアコンの設定温度を通常のめやす温度(28度)の1度上(29度)にしている(エアコンを使うのは来客の時ぐらいで、打ち水をしたり、ドア網戸や家具の配置換えで自然な風の通りをよくしてエアコンの利用を減らしている(p107-109)。

★k.冷蔵庫のドアを20秒開けた場合、10秒のときに比べて電気の消費量に違いが出ると言われている。そこでドアを開けっ放しでさがし物をしないよう冷蔵庫や食品庫の中身がわかるメモを貼っておき(最近は、レシートに食品名が記されているので、それを使う)ドアの開け閉めが短時間になるよう心がけている。また、放熱効果を高めるために、冷蔵庫の上に物を置かないようにしたり、庫内の温度を一定に保つよう熱いものは冷ましてから入れている(p116)。

★l.軽度の切り傷には、卵のからの膜を貼って治す。卵のからの内側にある薄い膜(卵殻膜)が、皮膚細胞の増殖を活発にして早く治る。卵の白身には消毒作用もあるらしい(p137-138)。

★m.失敗もある。トイレの流し水に風呂の残り湯を使ったところ、なま暖かいうえにカルキが抜けて腐りやすくなっていて貯水タンクをカビだらけにしてしまった。また、コンセントを何度も抜き差ししているうちにコンセントがゆるみ交換したこともある。そして、抜き方のコツがあることがわかった。それからは得た情報を実行する前に一応自分なりに考え、納得してから生活に取り入れるようになった(p182-183)。

★n.お金さえ出せば何でも手に入る時代の中で、手作りの品は意外に喜ばれる。特に食べ物はお金を出しても味わえないおいしさとぬくもりがあると言ってくれる。相手も買ったものより、気兼ねなく受け取ってもらえる。「また作って欲しいわ」なんて、リクエストもある。お中元・お歳暮・冠婚葬祭など、お金を使うところはきちんと使い、普段のおつきあいは手作りで締める。その区別をはっきりつけて贈り物をしている(p199-200)。

★o.山崎氏は20代の頃、仕事で日本とドイツを行き来する生活を、5年間送った。ムリをしなくてもずっと続けられるような節約の仕方を考えたとき頭に浮かんだのが、ドイツでみた「合理的でシンプルな生活」だった。自分や家族にとつて必要な物だけを買い、それをとても大切にし、見栄を張らずに生活を豊かに充実させる。本当に必要な物には惜しみなくお金を使い、まるで物に命があるかのように扱う。「物の豊かさ」と「心の豊かさ」との違いを痛感させられたという(p4-6,48-50)。

★p.新潮文庫に「ドイツ婦人の家庭学」という本がある(八木あき子著:平成2年3月25日初版)。ドイツ滞在歴30年の著者が衣食住の知恵456項目を紹介している。節約生活のヒントになります。