20世紀を生き抜くための「心」・「技」・「体」その26

はじめに
「心」ヨーロッパの住宅設計の考え方
「技」某プライベートクラブの税理士のセミナー(1997.12.11:東京)から

「はじめに」

★ あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
 21世紀(2001年)まで残り3年となりました。FPステーションの天野隆氏が情報発信している「天野隆メモ」を自分もつくりたくなり、1995年1月21日の金城同為会の新年会で研修講師をする機会をもらった時に手書きの「YTA細井隆好メモ」をつくったのがきっかけで情報発信を始めました。私に「伝えたい」ことがあって(それを聞いてもらいたくて)メモを送らせていただいています。
「体」- 健康であること。「心」- 前向きであること。「技」- 意義目的を忘れないこと。
 これは、平成7年の年賀状に書いた言葉ですが、「心」「技」「体」という3つのジャンルに分けたことでメモもまとめやすくなり、自分の考え方やスタンスが明確になりました。健康ということにこだわってはいけませんが、健康でいられることに感謝すべきだと思います。また、真のプラス発想は「あるがまま」を受け入れること(YTAメモ21「心」渋谷直樹氏)であり、感謝の気持ちを忘れないよう心がけています。そして目的と手段(テクニック)を混同しないこと。節税というのは企業経営の手段ではあっても目的にするものではありません。目的が変わったり、必要性がなくなればその目的に使われた手段は存在意義がなくなります。例えば世の中から病気がなくなって医療という目的がなくなれば医者や薬などの医療手段は必要ありません。税金がなくなれば税務署も税理士もいりません。必要性があるあいだは税理士としての職務を全うしたいし、そのための努力をしたいと思いますが、税理士という職業にしがみつかない生き方をしていきたいと思います。

「心」ヨーロッパの住宅設計の考え方

★a.前回のYTAメモ25「技」でメンタルトレーニングについて紹介したが、その著書(高岸弘著「思いのままに脳を動かす『残像』力」講談社)の第一章「建築家はメンタルトレーナー」でヨーロッパの住宅や家庭についての考え方が紹介されている。

★b.高岸氏は1947年、大阪市生まれ。1969年、単身イタリアに渡りミラノの建築事務所につとめながら建築を学ぶ。イタリアに10年暮らし、折りをみてはヨーロッパ各地を旅していて気づいたことは、ヨーロッパの大半の都市にはそこに住んでいる人たちが利用するのための“歓楽街”が(観光客向けは別にして)ないということ。大部分の人たちは仕事が終わると家に帰り、家族との時間を過ごす。おのずと自宅での滞在時間は長くなり、それだけに住居の内部空間に対する関心は高くなる。住宅や家具の専門雑誌が本当に売れるのかと思うぐらいの数がでていて、家具一つ選ぶにも、カーテン一枚決めるにも真剣である。

★c.高岸氏が仕事をしたロッシ邸の内装工事では、壁紙や天井のクロス、床のカーペットだけでなく、そこで履くスリッパ、ドアの取っ手、灰皿、さらに婦人のナイトガウンやランジェリーまでもデザインする。

★d.住宅とは、まず家族みんながリラックスする空間である。外での汚れを落とし、疲れた体に休息を与え緊張しきった精神を解きほぐしてゆったりとした気分で過ごせる空間である。しかし、それだけではまだ充分とは言えない。リラックスしたまま永遠に家に居続けるのならこれほど幸せなことはないが、不幸なことに(?)、私たちはまた外に出ていかなければならない。ストレスと緊張に満ちた社会と交渉を保っていかなければならない。

★e.住宅はそのための準備をする空間でもある。リラックスして一日の心身の疲れを取り除いたら、今度は集中することも必要である。明日に備えて、勉強するにしても遊ぶにしても、また食事をするにしても眠るにしても、雑念に惑わされることなく、それに没頭できる空間であってほしい。

★f.また、人間がなにかをうまく成し遂げようとすれば、まず「リラックス」し、次に「集中」し、そして「目標設定」する。従って住宅は家族一人一人の、あるいは家族全体の目標を設定する空間でもあるべきである。今日一日の出来事をそれぞれ思い、みんなが集まってコミュニケーションを深め、大きな目標とそれを実現するための小さな目標を確認しあえるような空間であってほしい。

★g.20数室の部屋がある「ロッシ邸」には「悲しみをやわらげる部屋」「過度の興奮をさます部屋」「目的を見出す部屋」「気分がハイになる部屋」「瞑想室」とでも名づけられるような部屋が、それなりの理由を持って配置されている。

★h.ヨーロッパやアメリカでは居間を広くとるケースが多い。高岸氏がボスのマンション(4LDK)を訪れたときも30畳ほどもある居間の広さに驚かされた。そのぶん各人の部屋は意外なほど狭い。寝るためのベッドとなにか私的な書き物をするための机がおければいいという考え方で、生活の中心は、あくまで居間で過ごすことにある。夜、居間に一家が集まる。夫婦が今日あった出来事を話し合っている。かたわらで幼い子がおもちゃで遊んでいる。一方の部屋の隅では年長の子が宿題をしている。そんな光景が浮かんでくる。ゆったりとした居間に常に誰かれが出入りすることによって家族全体の営みがスムーズに行われる。

★i.もっとも、ボスあたりの所得層になると、たいていの人が別荘を持っている。面白いことに、別荘では居間が狭く、個室が広くとられている。普段の生活では、できるだけ家族が集まり、その結びつきというものを大切にする。ところが別荘では一人一人の「個」というものを尊重し、自分を率直に表現する暮らしを大切にする。彼らは、この二種類を巧みに使い分けて、それを、居間と個室の広さの関係で表現しているのである。

★j.ヨーロッパでは昔から、住民は国家の財産とみなされ、遊牧民族などの外敵から守るために居住地の周囲に城壁を築き上げた(日本では国政に携わる人間のみを大事に考えて城内にいれ一般住人はその外に住まわせた)。

★k.安全が確保されている城壁内では当然人口が増えるがスペースには限りがある。そこで住居は、それぞれに必要な空間を確保しつつ大勢の人々が住めるような「共同住宅」の形態をとるようになり次第にコンパクト化していく。それでも人口の増加に対応しきれなくなると、上へ上へと伸び始め、いわゆる高層共同住宅群の出現となる。

★l.共同住宅では、その住みかたについてさまざまなトラブルが発生するのは人間同士である以上やむを得ない。ヨーロッパでは、騒音、水漏れ、ゴミなどの問題が18世紀から発生していたと考えられる。

★m.彼らは何百年もの年月をかけて出てくる問題のひとつひとつを解決しつつ、共同住宅に暮らすモラルをつくり上げていった。たとえば、バルコニーにとりつけられた花台に水をやる時間は、格別のお達しがあるわけでもないのに何時から何時までとだいたい決まっている。その時間帯であれば階下のバルコニーに水がしたたり落ちても誰も文句を言わない。干し物をはたくにしても、室内で大きな音を出すにしても、おのずと許容範囲が決まっている。このような、隣人同士の良いコミュニケーションがあることが精神的な安らぎの場としての住宅としての本来のあり方であろう。

「技」某プライベートクラブの税理士のセミナー(1997.12.11:東京)から(録音不可のため正確でない点はご了解ください)

★a.世界的なプロスポーツ選手はタックスヘイブンと呼ばれるモナコやスイスを納税地にしている。セナやヒンギスはスイス。ドイツに納税地のあるシュティフィ・グラフは脱税であげられやすい。かつて日本の税率が最高88%だったときアメリカは28%であり、岡本綾子や青木功、野茂英雄はアメリカを納税地にしている。音楽家の小室哲哉も来年の高額所得者名簿から名前が消えるかもしれない(納税地をアメリカに代えて)。

★b.不景気に強い税金として消費税と相続税がある。消費税5兆5千億円は全国民で負担するのに対し、相続税2兆1千億円の対象被相続人は5万1千人。1件あたり4千万円である。納税対象者の8割が太平洋ベルト地帯で3人に1人。東京では10人中7人。

★c.日本の相続税第1号は三井家。日露戦争でお金が必要になったが財源がない。困っていたところ三井家の当主が亡くなった。死亡した後で遺産富裕税を創設し、遺産の3分の1を取り上げた。このときの税収が当時の国家予算よりも多かったという。

★d.税金はあるところから取る、取りやすいところから取るものであり相続税の最高税率70%というのはほかに例のない高税率である。講師の税理士は「ジェラシータックス」だから、税率の引き下げは考えられないと述べている。また相続税の補完税である贈与税の基礎控除60万円も10年たってもあげる可能性はないと断言している。

★e.脱税資金の温床となっている無記名債券(顧客は受付番号で呼びだし氏名を呼ばないそうです)の隠し場所ベストスリーは、犬小屋の屋根裏、ギターなど楽器の中、熱帯魚の水槽の底のところだそうである。

★f.当局は2001年をめどに納税者背番号制の導入を考えている。そして納税者番号がないと登記ができなかったり、銀行から預金が引き出せないようにしてしまう。名義貸しをしたときの刑事罰も整備する。

★g.次に、2004年にデノミを実施する。これによって脱税資金の隠し場所になっているタンス預金や無記名債券を吐き出させる。デノミによる新貨幣への切り替えにより、旧貨幣となった脱税資金が使えなくなるのでいったん表に出さざるをえなくなる。

★h.納税者番号制は当初預金取引のみとし、生命保険や郵便局はあとまわしとする(4年遅れの予定)。これは預金などの脱税資金が海外へ逃げないよう受け皿として機能させるためである。

★i.日本では相続税の補完税である贈与税の納税義務者を贈与を受けた受贈者としているが、欧米は贈与をする贈与者に納税義務があるとしている。 

★j.この税制の違いを利用した節税がある。例えば、ある資産家Aは自分がオーナーである会社のアメリカ店をつくり自分の息子Bを支店長として常駐させる。そしてAはアメリカの銀行の預金口座に5億円を送金する。Aはアメリカに旅行中にアメリカの銀行から5億円の預金を引き出しBに贈与する。この場合AもBもどちらも贈与税がかからない。

★k.受贈者Bは一年の半数以上(183日)をアメリカに滞在するため、アメリカの居住者になり、日本の居住者ではない(受贈者にならない)ので日本の贈与税は課税されない。また、アメリカの贈与税は贈与を行った贈与者にかかるのであって受贈者Bは課税されない。

★l.贈与者Aは日本の居住者であり、アメリカの被居住者にあたるため贈与者課税はされない。日本の贈与税は受贈者課税であるため、課税されない。

★m.受贈者BがAの扶養家族になっている場合は日本の居住者扱いになるため日本の贈与税が課税される。

★n.贈与者Aの贈与財産が不動産であり、かつその財産がアメリカにある場合にはアメリカの贈与税が課税される。

★o.つまり、日本でもアメリカでも、そして受贈者Bも贈与者Aも、贈与税がかからないのである。